スクリーニング調査は、本調査に進む対象者を「ふるい分ける」ための事前調査です。
適切に設定することで、調査ターゲットを適切に集めることができますが、設定によっては回答データに歪みが生じてしまう場合もあります。
調査をする側にとって、スクリーニングは「対象者を絞り込むフィルタ」ですが、回答協力者にとっては「最初に接する調査体験」でもあります。回答者は限られた時間の中で誠実に協力してくださっていますが、悪い調査体験に出くわしたとき、回答意欲を削がれてしまったり、正確な回答ができなくなってしまうことがあります。
良いスクリーニングとは、回答者の立場に立ったわかりやすい設問で、精度良く対象者を選び出せる設計ができているものです。
本記事では、効果的なスクリーニング設計の実践ポイントを整理します。
最初に、アンケートに協力してくださる回答者様について理解しておきましょう。
Webアンケートのモニターは、モニターサイトやポイントサイトなどを通じてアンケートに参加します。アンケートに回答いただいた方に、サイトのポイントや現金などで謝礼をお支払いする仕組みです。
モニターサイトとは?
モニターとして登録し、募集されているアンケートやサービスモニターに協力することで謝礼を得ることができるサービスです。
ポイントサイトとは
会員登録をしたユーザーがサイトを通じてアンケート回答やサービス利用などのタスクをこなすことでポイントを獲得し、たまったポイントを現金や電子マネーなどに交換できるサービスです。
一般的にアンケート回答で得られる報酬は1問あたり1〜5円(利用するサイトにより異なります)と比較的少額です。得られる金額に対する価値感も回答者によって様々ですが、多くの方が少額の報酬で協力してくださっていることを意識しておきましょう。
多くの回答者は、移動中、家事の合間、休憩中などのちょっとした「スキマ時間」にスマートフォンで回答しています。また、スマートフォン利用全般に言えることして、食事をしたりテレビや動画を視聴しながらといった、「ながら利用」も多いです。
そのため、悪意はなくとも次のようなことが起こりやすくなります。
長い文章や説明文を読み飛ばしてしまう
選択肢が多かったり似た設問が並んだりすると、なんとなくで選んでしまう
質問の意図を早合点してしまい、勘違いして回答してしまう
回答する人の気持ちや状況に寄り添ったアンケートにすることが質の高い回答を得るための最大の秘訣です。
次に、不適切回答が発生してしまうメカニズムを理解しましょう。
前提として、ほとんどの回答者が真面目に回答をしてくださっています。不適切回答が起きる理由は、回答者ではなく、悪い回答体験にあります。
悪い回答体験の例
設問数が多い、終了までの所要時間が読みづらい
質問文がわかりにくい、難しい
1つの設問で2つ以上のことを聞かれている
自分に当てはまる選択肢が用意されていない
自由回答形式の説問が多い
こうした体験に出くわしたとき、次のような回答が生まれやすくなります。いずれも、回答者を責めるためではなく、設計時にどう防げるかを考えるために理解したいポイントです。
サティスファイシング(努力の最小限化)
設問数が多かったり負担の大きい調査だと、回答者はなるべく早く終わらせたいという気持ちになります。その結果、連続して同じ選択肢を選んでしまったり、後半の設問をあまり読まずに回答してしまったりすることがあります。
意図の汲み取りによる事実と異なる回答
通過条件が推測しやすい設問文だと、回答者は深く考えずに「これを選べば良さそうだ」と直感的に反応してしまうことがあります。設問側で意図を透けさせてしまっていることが主な要因です。特に、対象条件になる選択肢だけが浮いて見える設問や、調査テーマが冒頭で明示されている場合に起きやすくなります。
調査側からは結果的に「なりすまし」に見える回答です。
勘違いによる誤った回答
文章が長かったり読み解きにくい場合、文章のはじめの方だけを見て内容を早とちりしてしまい、早押しクイズのように勘違いして間違った答えを選んでしまうことがあります。
属性・条件の偏り
除外条件や通過条件の設計が甘いと、本来ターゲットではない層が混入したり、逆に本来含めるべき層を弾いてしまったりします。
例えば、設計者は小さな子どもと同居している人を想定して「お子様はいますか?」のような質問をした場合、回答いただく方には成人した子ども、別居している子どもがいる方もいるため、意図したターゲットに絞り込めないというケースです。
設計側の思い込みや、定義の曖昧さが原因となる点に注意が必要です。
ここからは具体的な設問作成のポイントを解説いたします。
設問文などで「〇〇に関する調査です」と調査テーマを書いたり、選択肢のバリエーションが特定のカテゴリを意識したものになっている場合、回答者は「〇〇について良い/使っている回答をすれば通過しやすいはず」と調査テーマを推察しやすくなってしまいます。
調査テーマを伏せることで、なりすまし回答の防止に加えて、回答者の偏りを避けられるという効果もあります。
調査テーマがわかりやすいと、そのテーマに関心・知識がある人ほど積極的に回答し、関心の薄い人は離脱しやすくなります。その結果、回収できたサンプルが「そのテーマに関心が高い人」に偏ってしまい、本来把握したいはずの市場全体の実態(無関心層・非利用層を含めた分布)を正しく反映しなくなります。
調査テーマを隠すことは、こうしたバイアスを抑え、対象者の構成をより実態に近い状態に保つためにも有効です。
例:ビール飲用者を集めたい場合
NG例
Q. あなたはビールをよく飲みますか?
はい/いいえ
Q. 次のうち、よく飲むアルコール飲料を教えてください。
ビールA/ビールB/ビールC/その他のアルコール飲料/あまり飲まない
1つ目の例では「はい」と答えれば通過できると一目でわかってしまいます。
2つ目の例では明らかにビールを意識した調査であることがわかってしまいます。
OK例
Q. 過去1ヶ月以内にご自身で購入した飲料をすべてお選びください。
ミネラルウォーター/炭酸水/スポーツドリンク/ビール・発泡酒/ワイン/日本酒/いずれも購入していない
対象条件(ビール・発泡酒)を、関連性のある他の選択肢の中に自然に並べ、ビールを選んだ人を通過させることで、意図を読み取られにくくします。
年収や役職、悩みごとなど「直接聞くと意図が透けやすい」項目も、単独では聞かず、複数の選択肢の一つとして提示します。
例:世帯年収1,000万円以上を対象にしたい場合
NG例
Q. あなたの世帯年収(税込)としてあてはまるものをお選びください。
1,000万円未満/1,000万円〜1,200万円/1,200万円以上/わからない・答えたくない
高所得層をターゲットとしていることがわかりやすい上、平均的な収入や収入の低い方に不快な思いをさせてしまう可能性もあります。
OK例
Q. あなたの世帯年収(税込)としてあてはまるものをお選びください。
300万円未満/300万円〜500万円未満/500万円〜700万円未満/700万円〜1,000万円未満/1,000万円以上/わからない・答えたくない
すべての年収帯を均等に並べることで、「1,000万円以上」だけが特別扱いされている印象を与えません。
回答者が回答しやすい調査票づくりに配慮することで、質の良い回答を得ることにつながります。
スクリーニングの設問数は、目安として5問程度に収めます。設問が多いほど適当な回答のリスクが高まるため、「本当に通過判定に必要な設問か」を一つずつ吟味し、削れるものは削りましょう。
NG例
Q. 最近、外食をする機会は増えましたか?
最近がいつからいつまでのことか、いつと比較して増えたかの基準が人によって異なってしまいます。
OK例
Q. 昨年1年間と比べて、今年の外食の頻度は増えましたか?
増えた/減った/変わらない
1つの設問で複数のことを同時に聞かないことを意識しましょう。
NG例
Q.この商品のデザインと価格に満足していますか?
→「デザインはいいけど価格が高くて不満」と感じているとどう答えていいかわからない
デザインと価格、それぞれの質問に分けましょう。
選択肢は重複や抜け漏れがない状態(MECE)に整理し、回答者が「自分に当てはまるものがない」と迷わないようにします。また、選択肢が多い場合は、上から順に選んでしまう「順序バイアス」が起きやすいため、ランダム表示の活用も有効です。
NG例
Q. 1週間に何回筋トレをしますか?
1〜3回/3〜5回/5回以上
→3回と5回が重なっていて、どちらを選ぶべきかわかりにくくなります。
OK例
1〜2回/3〜4回/5回以上
専門用語や難しい表現を避け、一般の生活者が読んですぐ理解できる平易な言葉を使います。スキマ時間での回答という前提に立ち、「読み返さないと意味が分からない設問文」がないか確認しましょう。
NG例
Q. サブスクリプション型のオンボーディングフローに満足していますか?
→用語の意味がわからない人は、なんとなくの回答をしてしまうおそれがあります。
OK例
Q. 利用を始める際の手続きはスムーズでしたか?
『アンケート作成のポイント』では、スクリーニング以外の調査票作成のコツについても解説しております。合わせてご覧ください。
アンケート作成のポイント
不適切回答を防ぎ、回答の質を高める調査票作成のコツ
回答者の気持ちに寄り添って設計する
スクリーニングの通過条件を「推測させない」
回答者がかんたんに答えやすい設問にする
この3点を押さえることで、不適切回答を減らしながら、本調査の精度と信頼性の土台となる、質の高いスクリーニングを設計できます。
ユニーリサーチでは不適切回答リスクを減らすため、下記の取り組みを行っております。
AI自動クリーニング
自由回答の内容をAIで解析し、不適切回答を自動的にクリーニング(除外)します。
除外された回答は納品データには含まれません。
回答者のスコアリング+自動ブロック
AIクリーニングでの検知、回答時間などから回答態度を総合的に分析し、回答者に独自のスコアを設定しています。スコアが一定を下回った場合、アンケートが配信されないよう自動ブロックを行っています。
分散配信
アンケート回収タイミングを分散することで、早期 回答者に回答が偏重しないよう工夫をしています。
回答削除・回答補充
回答データに不適切回答があった場合、回答一覧から削除できます。アンケート終了から7日以内に限り、削除した分の回答を補充する回答補充機能もご利用いただけます。